GF Archives Pj
アニメーションにまつわる、あんなことやこんなことをご紹介していくガレージフィルムアーカイブ。昔ながらの手法から作品にまつわるスタッフの思い出話まで様々なエピソードをお楽しみください。
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GF Arichives Pj Vol.1ピクシーダストアニメーションの思い出
このポストのアーカイブポイント
ディズニーのピクシーダストを手作業で再現していた時代。黒紙に鉄筆で穴を開け、メンソレータムで光のにじみを生み出していた職人技から、デジタルのパーティクル表現に至るまでを、山本夫妻が振り返ります。
⼭本さん、ピクシーダストってなんですか?
ピクシーダストっていうのは、ディズニーのアニメーションでさ、妖精がピューって飛んできたらさ、なんていうの、ナイアガラの滝みたいに金色の粒が落ちてくじゃない。それがピクシーダスト。
当時は全て手作業だから、そのピクシーダストも全部描かなきゃいけないわけ。
これ点がいくつあると思う?
大変じゃないこれ。ディズニーのアニメーションって1秒あたり24コマあるから、1枚に点が1000 個あるなら一枚ごと1000個とか描くわけ。点は次のコマでちょっとずれてなきゃいけない。下に。
アニメーションで動いてないといけなから。それは適当にやらないで、ちゃんとやらないといけない。今ならエフェクトで簡単にやれるけど、1ミリ下に点を送った次のコマ を描かないといけない。
僕らが最初に作ることになったのは1980年頃で、ペリエのコマーシャルで炭酸がシュワ~っていう表現をする時。
ピクシーダストに近いものをやろうとして、森まさあきさんとオリジナルを研究し始めたの。
なんかお土産でさ、覗き込んでアニメを見れるおもちゃみたいなのがあって、手でハンドルをカラカラ回すとピクシーダストのコマ送りアニメが見えるのがあったんだけど、それを何度も回しながら「こうなってんだ、へー」とかって言いながら見てたのを覚えてる。
乃梨子さんが最初にやったのも、そのペリエですか??
⼀番最初にやったのなんだろうな?
私はディズニーランドのCMだったのは覚えてる。
東京ディズニーランドのロゴのところにチラランっていうのをやった気がするかな。ピクシーダストというより光のエフェクトのような感じで秒数は短かかったけど。
ピクシーダストっていう⾔葉はここでできたんですか?
それはわかんない。分からないけど、ディズニーの⼈のインタビューを聞いてたら、ピクシーダストって⾔っているっていう。
じゃあ、ディズニーの⼈たちが作ったから、たぶんそういう呼び⽅だろうねって。
この動画はいつ頃のものですか?
わかんないです。
もう20年ぐらい経ってると思う。
まだガレージフィルムを作る前のやつですね。⽩い紙にこういうように無数の点をね、描いていくわけですよ。
1枚目と2枚目を見ると距離がとんでるでしょ?この動画は飛び散るエフェクトだから最初早いんだよね。爆発って速いでしょ?だからとぶの。で、あとはゆっくりとなるっていう。最初にもう2枚くらい画を⼊れてもいいような気がするんだけど⼊れない。そこがね、アニメーターのセンスというか力量というか。
当時はこれを撮影するわけですよね?
そうそうそう。ハイコントラストの⽩と黒しかないフィルムで撮ってました。中間⾊のグレーもないようにきれいに取れるやつ。
⽩っていうのは、要は透明に黒が残るっていうフィルムで取ってたんです。
で、最終的に黒いとこだけに好きな⾊をつけるってことをしてました。
さらにアニメーションの話をすると、ピクシーダストってあちこちでチカチカって⼗字の光が輝いてるでしょ?あれを作るのに、白い紙に黒い点を描いたあと、今度は黒い紙に穴を開けるってことをするわけ。
描いた点全部に十字の光をつけちゃうとうるさくなっちゃうので、数を間引いて穴を開けた黒紙を作っていきます。
なんで黒紙に⽳が開けるかっていうと、撮影をするときに紙の下から光を当てて、本当に光ってるみたいな、チカーンと「綺麗なクロスみたいな形になるように撮るわけです。
あの夜に⾞乗ってる時なんかに、光がピーって横になってたりするじゃない?ああいうイメージですね。そして点の素材とクロスの素材を合体させるわけです。
⽳はなんで開けてるんですか?
鉄筆。
鉄筆??(グーグルする)
錐みたいなの。昔は学校の先⽣のお知らせなんか薄い紙に鉄筆で書いたやつを擦り器で刷ってって。
ガリ版ってわかるわけないか。まあ、プリントごっこみたいなの。
ディズニーでどうしてたかは?だけど、これいいんじゃね?で使ってたと思う。画鋲のピンでやれって⾔われてもできるっちゃできる。
この⼿法をちゃんと踏襲したのは⼿塚治⾍さんで、鉄腕アトムもやってたはず。当時の撮影監督の孫弟子に当たるのが乃梨子さんでね。あと、これを単なるキラーンじゃなくて、光が滲んだような感じ(グロー)を作ろうとしたんだよね。
かちっとした光じゃなくて、ちょっとふわっとしたやつね。
それを作るノウハウを自分が所属していた前の会社のカメラマンたちが発⾒したんだよ。理科の実験で使うプレパラートってガラスあるじゃん。あそこにさ、油をちょっとつけて、そのプレパラート越しに撮影するっていうね。で、グローの塩梅が塗る厚みとか色々とあるんだけど、いろいろ試した結果、メンソレータムが良いってことになって(笑)
さらにすごいなと思ったのは、細い柔らかい刷⽑でさ、塗ったメンソレータムを縦横に伸ばすんだよね。その伸ばし方で光の滲みのニュアンスを出してたんだよね。当時は秘密だったけど、もう誰もやらないよね(笑)
でも私はメンソレータムだとなんかちょっと強い光になっちゃうんで鼻の油が良かったり、みたいな。
ディズニーもそういうような⽅法を使ってたんですかね?
いや、それはね、どうだろ?ピーターパンとかに出てくるティンカーベルのアニメを⾒てもらうと、チカチカはアニメーションされてるんですよ。
今でいう後処理的なエフェクトじゃなくて、完全に描いてるってことですね。
どこでディズニーがグローさせていったのかはわかんないんだけど、でもそれを見てやってみようって。で、メンソレータム。
光る程度は、カメラの絞りもあるし、メンソレータム具合と刷⽑の塩梅で。自分でアニメーション描いて、穴あけて、撮影してってやってました。
さっき言った⽩黒フィルムで⾊をつけて、黒紙で作った光をのせるっていう⽅法は後から考えて、⼀番最初は一発でフィルムで撮り切っちゃう方法でやってたの。フィルムで撮ったままのが⼀番綺麗だったんで。そうするとどうしたかっていうと、点々は⽩紙じゃなくて、全部黒紙に⽳を開けるんですよ。1回⽳を開けて、そうそう、⽳を開けて、それを減らしたやつで、その置換っていうのを作ったんだけど。
だからすごい大変なんです。 1度アニメーションを作った後に、穴をてんてけてんてけ開ける。もう私、何度腱鞘炎になったことか。
少し話が戻りますけど、 動画の1 から 2 に⾏くのってやっぱそれなりに経験がないと、こっからここにしようと思わないじゃないですか?今ならデジタルで何度もトライアンドエラーできますけど。最初に設計を考えますよね?
そうそう、ざっくりね。1秒でここまで⾏くって考えて、スタートしてからゴールに⾏くまでを組み立てる。
軌道に対して1フレームごとの点の移動具合が描いてあるんだけど、最初は間が広くて狭くなってくでしょ。これがニュアンスなんだよ。最初パーンっていって、だんだんゆっくりになって、最後動かないで、かつ消えていくの。
でも、これは中⼼から外に広がって落ちていくっていう動きなんで、そんなに難しくはないんだけども、妖精から出るピクシーダストのように発生源が動いていて、その時間差で落ちていくっていうのはちょっといろいろ厄介だったかな。
ものを横で⾒るときはわかりやすい部分もあるけど、例えば手前奥っていうのは実はすごい下まで下がってても、遠くはちょっとしか下がらなったりするから、そういう動きを設計するのはすごい難しい。結局アニメーションって観察が大事だよね。
他には、黒紙に⽳開けるにしても、普通にただカチカチカチカチやるんじゃなくて、もう⼀⼯夫強弱つけたりもするともっと明滅するとかね。強い弱い強い弱いと。明滅は⽳の開け⽅でも変わるし。
そう、⽳を開けるときにはワルツのリズムで避けましょうって。全部同じ⼒じゃなくて、強い、弱い、弱い、強い、弱い、弱いって。
光にニュアンスが出てくるよっていう話ですね。
⼤きいバンっていう光と、ちっちゃいチカーンっていうのが混じるから。まあ本当になんか職⼈のこだわりみたいな。
ただ⽳開けるって言っても俺がやったりすると下⼿なのよ。やり直しって⾔われちゃう(笑)。
そうね、尺がすごい⻑いやつがあって手伝ってもらったことがあるんだけど、⼈が変わると⽳が変わっちゃうんでダメなんだよね。その時は変わり⽬のとこだけをうまくごまかすようになんとかやったんだけども、やっぱり⼈が変わっちゃダメ。
人が変わってもそれがわからないようにするのが今の技術のすごいところでもあるとは思う。デジタルが進歩して手軽にピクシーダストを作れるようになる前まではこんな感じで、最近かな?パーティクルでやれるようになったのは。
さっき調べたら、できるようになってきたのが 90 年代から 2000 年代。
まあ、最初のパーティクルって、単純にバーンとか、画⼀的なものしかできなくて、それこそ作った後にCGソフトの中でいじることをしないと好きなように動かせなかったから。
乃梨子さんに聞きたかったのが、腱鞘炎になりながら⽳開けてたから、コンピューターでできるようになった今でも、なんかこうちょっと作るものが違ってくるなみたいなことってあったりするんですか?
そうだね。例えば、最近のイオンのCMでも光のパーティクルを作ったじゃない。
量とかスピードとかは⾒ながら調整できるんだけども、パーティクルって物理シミュレーションなんで、早く動いたら早く動いたなりの動きがどうしてもついてしまう。そうするとスカスカな部分ができてしまって画としては綺麗じゃなかったり。
物理的なことはそれはそれでいいんだけど、もうちょっと、ここにもいっぱいキラキラつけたいよって時になかなか思うように痒いところに⼿が届かないんだよね。そうなってくれないんですよ、本当の動きなんで。
でもアニメーションって本当の動きじゃない動きをプラスして,⾯⽩くしたりとか、実際の、現実的じゃない動きが⼊ったとしても、それが綺麗だったらいいのかなっていうような部分はあるんだけども、やっぱり物理シミュレーションはどうしてもそうはなってくれない。そこを何とかしようとすると、全体的におかしな動きになっちゃうとか。
そういうことがあるんで、基本の動きを作って、基本はそれでいいんだけど、この辺を増やしたいとか、この辺を減らしたいとか、そうなった時には、私はとりあえず多めのパーティクルをバーって⾶ばして、そのままだと多すぎてキラキラやってもそれこそ重なっちゃってね、重なっちゃってあんまり1個ずつの綺麗さが出ないなって時は、1回それで計算して作ったやつを減らすわけ。
昔、撮影で作ってた時にもそのような考え方はあったんだけど、今だとフラクタルなどを使ってかませて調節してってやってます。
あとメンソレータムでやってたグローも今だと例えばスターグローみたいなのがあって、ボタンをプチってやると、これですか、これですか、これですか?っていっぱい出てくる。⻑さも調整できたり簡単にできちゃう。
それはそれで調節ができるからいいんだけども、それだけだとやっぱり単純なエフェクトではあるので、私はやっぱりキランとかパチーンみたいなアニメーションを手で描いて、それを 2,、3種類作って、それをパーティクルで⾶ばして混ぜるっていうことをしている。
そうすると、パーティクルで作っただけじゃないんだぞみたいな感じで、全部手描きではないんだけれども、ちょっと違うぞってなるので。
⼈によってやり⽅はそれぞれ違うんですね。
今はもう本当にソフトを使えば,誰でも同じようなものが簡単にできちゃうから、やっぱりなんかしらの差別化までいかないけども、なんかちょっと⾒た感じが違うな、とかは加味していかないとやる意味がないなって。
まあ、⾒る⼈が⾒たらね、わかる。どっかから持ってきたなっていうのとはそうじゃないのと。
物理シュミレーションでやった本物っぽいものがいい場合ももちろんありますけど、うちがやってるのはどっちかっていうと違いますよね。
アニメーションの中でやるんだったら、やっぱりアニメに寄せたいから、アニメーションの要素をできる限り⼊れる。でも、実写の流れ星みたいなものがほしい場合はあんまりアニメアニメしててもね、それは違うから。使い分けないと。
今、逆にアナログ学びたいっていう⼈もいるんですかね?
道具のこともあるし、なかなかね、難しいかもね。
撮影までって言われたらもうやりたくないかも、私(笑)。
最後に気になってしまった質問なんですが、パーティクルとピクシーダストって同じですか?
ピクシーダストは多分その、ディズニーがティンカーベルを⾶ばした時にキラキラがついてくるっていうことの⼤きな名称で、パーティクルっていうのは物理シュミレーション。
別にキラキラを作るためだけのものではなく、いろんなことができるのね。例えば爆発とか、⽔とか。その機能を使って、ピクシーダストのようなものを作れるよっていう。
私は⿐の脂のお話が面白かったです。乃梨子さんの⿐の脂はちょうど良かったんですね。
⼈の触りたくないし、⾃分でしかやらないよ(笑)。










